研究主題について

令和3年8月23日更新
  

全国中学校理科教育研究会研究主題
「理科の見方・考え方を働かせて資質・能力を育み、豊かな未来を切り拓く理科教育」

 

全国中学校理科教育研究会としての研究主題が令和元年度全中理秋田大会役員会・理事会で審議され、上記のように大会総会で承認・決定されました。 全国各ブロック及び都道府県、市区町村の理科教育研究会が一体となって、今後の理科教育の充実に向けた研究活動が活性化することを期待しています。

   

1 研究主題設定の理由

 現在、知識基盤社会の中にある日本は、新しい知識・情報・技術をめぐる変化が速く、情報化やグローバル化などの社会的変化が予測以上に進んでいる。今後はこれらの変化に加え、高齢化とともに人口減少が進む中、人工知能の急速な進化が雇用環境の在り方に大きな変化を与え、一層複雑で予測困難になると言われている。
 これら山積する課題をグローバルな視点で解決し、調和のとれた豊かな未来を切り拓いていくためには、科学技術の更なる発展・成熟が進められるとともに、子供たち一人一人が持続可能な社会の担い手として,その多様性を原動力とし,質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待される。理科教育の充実は、日本の豊かな未来の創造には不可欠なものである。そのためには、子供たちが自然の事物・現象に進んでかかわり、それらを科学的な目で見る体験や探究の過程を通して、課題を解決していくための資質・能力を子供たち一人一人に育んでいかなくてはならない。
 そこで、私たちは、各都道府県理科研究会共通の研究主題を「理科の見方・考え方を働かせて資質・能力を育み、豊かな未来を切り拓く理科教育」とし、全国大会ではこの研究主題を受けて開催地が大会主題を設定することとした。この研究主題は数年程度継続するものとし、豊かな未来を切り拓く人間の育成を目指して、理科教育にかかわる全ての教職員及び関係団体が一体となって理科教育の振興・推進を図ることをねらいとしている。
 「理科の見方・考え方」の「見方」と「考え方」とは、別である。「見方」とは自然の事物・現象を、質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な自然で捉えることである。一方「考え方」では、小学校までに学んだ比較、関係付け、条件制御、多面的思考などの考え方が利用できるだけでなく、共通点と相違点、規則性や関係性、巨視的、微視的、連続性、順序性等様々なものがある。これらを教科の内容と結び付けることで、学習活動を展開することが求められている。
 理科で育成すべき「資質・能力」には3つの柱がある。まず、「何を理解しているか、何ができるか(知識・技能)」では、「自然の事物・現象についての理解を深め、科学的に探究するために必要な観察、実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする」ことである。次に、「理解していること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」では、「観察、実験などを行い、科学的に探究する力を養う」ことである。最後に、「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)」では、「自然の事物・現象に進んで関わり、科学的に探究する態度を養う」ことである。
 「豊かな未来」の「豊かさ」の捉え方は個人の価値観に依存し、大きく「物質的」と「精神的」の二つの側面から捉える。しかし、本来この二つは相反するものではなく、共存して「豊かさ」を相互に高めるものである。同様に、「豊かな未来」の捉え方も、一人一人の価値観に依存する。「豊かな未来」を考える際に、より広い視野で、国際社会における日本の国としての在り方、個人の生きがい、自然と社会との調和、未来社会への夢など、バランスのとれた価値観をもとに、個人が自らの価値観をより普遍的なものへとしていくことが求められる。
 これらのことを踏まえ、理科教育においては、自然界及び人間の活動によって起こる変化について、その神秘さや不思議さに驚き、目を見張る感性をもとに、その変化を理解し、科学的知識を駆使して課題を明確にし、証拠に基づく結論を導きだし、自ら意思決定をするための資質・能力を育てていかなければならない。そして、そのために、体験的な学習や問題解決型の学習を充実させ、「自分の考えをもち論理的に表現する能力」「考える力、判断する力、表現する力」などを育成することを重視していかなければならない。

2 研究主題及び大会主題の在り方

 現在の「研究主題」は、平成30年8月の全中理大会役員会・理事会で承認され、令和元年度の秋田大会から使用しています。
 平成23年度に承認され、平成25年度の東京大会から平成30年度まで使用されていた研究主題は「科学的な資質や能力を育み、豊かな未来を創造する理科教育」でした。
それ以前の全中理全国大会では、大会開催地がまず大会主題を設定し、それを受けて研究主題を設定していました。しかし、全国各ブロック及び都道府県、市区町村の理科教育研究会が研究活動を一体となって活性化して進めていくことができるようにするため、全中理として数年程度継続する研究主題を設定し、全国的な研究活動を継続的に推進していくことになりました。
そこで現在全国大会では、この研究主題を受けて開催地が大会主題を設定することとなっています。